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神戸地方裁判所 昭和60年(行ウ)39号 判決 1989年5月22日

原告 梶原合資会社

右代表者無限責任社員 梶原恭一郎

<ほか三名>

右原告ら訴訟代理人弁護士 後藤伸一

同 山崎喜代志

被告 姫路市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長 辻正一

右訴訟代理人弁護士 高谷昌弘

同 有田尚徳

同 岡野良治

主文

原告らの請求を棄却する。訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実

一  請求の趣旨

1  別紙目録(一)ないし(四)記載の土地に対する昭和六〇年度固定資産課税台帳登録価格につき、被告が昭和六〇年六月二六日付でした審査決定をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

三  請求の原因

1  原告梶原合資会社は別紙目録(一)記載の土地を、原告梶原倭文は別紙目録(二)記載の土地を、原告山本正彌は別紙目録(三)記載の土地を、原告山本幸二は別紙目録(四)記載の土地の持分二分の一を所有し、その固定資産税の納税義務者である。

2  姫路市長(以下「市長」という。)は、地方税法四〇三条、四一〇条等の規定に基づき、右各土地に対する昭和六〇年度の固定資産の価格を決定し、同法四一一条の規定により、固定資産課税台帳にその価格を登録した。その登録価格は、別表の市長決定価格欄記載のとおりである。

3  原告らは、昭和六〇年五月一日、被告に対し、右登録価格につき審査の申出をし、原告山本幸二を除く原告らは口頭審理の方法による審査手続を行うべきことを申請したところ、被告は、後記口頭審理を経て、同年六月二六日、右申出を棄却しあるいは登録価格を一部修正する旨の決定をなした。修正分は、別表の審査決定価格欄に記載のとおりである。

4  右審査決定は、次の理由により違法である。

(一)  手続的違法

(1) 本件においてなされた口頭審理は、原告梶原合資会社に対してはその代表者の梶原恭一郎の分と併合して昭和六〇年六月七日午後一時一〇分から同二時八分までの五八分間、原告梶原倭文に対しては同二時三八分から同五八分までの二〇分間、原告山本正彌に対しては、同三時二八分から同五〇分までの二二分間、それぞれなされたのみで、審理終了に先立っての意見陳述や資料提出の機会が満足に与えられなかった。被告は、その後同月一四日に原告梶原合資会社及び梶原恭一郎の関係で委員会を開いたほかは、同月二六日に委員会を開いたのみで、しかも他の多数の審査申出事案とあわせてすべて同日直ちに決定に至っており、十分な審理を遂げていない。

(2) 被告は、右口頭審理に先立ち、同年五月二二日午後二時四〇分から同三時四五分までの間、姫路市(以下「市」という。)の資産税課職員の案内で、大塩、的形の旧塩田地区一帯の実地調査をしたが、原告らには何の連絡もなく、どのような説明のもとにどのような実地調査がなされたのか原告らには不明である。同月二七日には、非公開で市の資産税課の担当者と協議し、同年六月七日の前記口頭審理の直前には午後〇時三〇分から、非公開で右担当者から事情と意見を聴取し、同月一四日には、市の総務局長、資産税課長らを呼んで、五時間半に及ぶ委員会を開いている。地方税法(以下「法」という。)及び姫路市固定資産評価審査委員会条例(昭和二六年一〇月一日条例第三三号、以下「条例」という。)の諸規定を総合すると、固定資産評価審査委員会の口頭審理は公正中立な審査機関である委員会が行う公開による双方審尋と当事者対等を前提とした準司法的な手段であり、双方の主張立証は口頭審理の場でなされるべきであって、被告の右のような手続外での一方当事者からのみの意見聴取は、違法である。

(3) 本件審査決定は、市長の主張を繰り返しただけで、具体的資料及び根拠が全く付されておらず、原告らの主張に対する判断をも欠いているから、理由不備の違法がある。すなわち、原告らは、後記のとおり、同じ塩田(現況は雑種地)でも市街地に近いものもあれば市街地から遠く離れて海に近いものもあるのに、一律に同一評価になっているのは均衡を失することを強調したが、これに対して何らの判断もしていない。また、近傍地の選定についての判断、比準減価、無道路地の減価、面積減価、低地減価のいずれについても、どのような資料と根拠に基づき市長の評価を妥当としたのか全く明らかでない。

(4) その他、議事録、実地調書の署名押印も満足にされていない。

(二)  実体的違法

本件各土地の評価価格はいずれも、近隣ないし周辺の土地と比較して不均衡かつ不公平に高額である。すなわち、本件各土地の位置関係と平方メートル当たりの審査決定価格は大略、別紙図面のとおりであるところ、

(1) 本件各土地は、いわゆる大塩、的形地区の旧塩田地帯のなかでも最南端に近く、最寄りの山陽電車の駅や市街地から最短距離で約八五〇メートル、最長距離では約一七〇〇メートルに達する。いずれも、市街化調整区域とされており、面積ばかり大きくて、公道から車が通行できる道は一切ない。

(2) 他方、別紙図面記載A付近の土地は、国道にも近く、市街化区域に入っていて、本件各土地と比較して格段に条件が良いのにかかわらず、平方メートル当たり六一四四円の低価格である。

(3) さらに、別紙図面記載Bの土地は高砂市の土地であるが、これらは、隣接の姫路市の土地と現況において変わりがなく、本件各土地と比較すれば格段に条件が良いのに、平方メートル当たり一六〇〇円(市街化調整区域)ないし三五二八円(市街化区域)と評価され、本件各土地の実に三分の一から三分の二の価格である。

(4) 市長及び被告は、同じ塩田内でも場所も条件も違う土地を、単に埋立ての程度による低地減価をしたのみで、各土地の優劣を考慮せず、十把一からげで一律評価をしている。東西約二キロメートル、南北約一・五キロメートルに及ぶ広大な土地がすべて一律の減価率で計算されてよい筈がない。

よって、原告は、本件審査決定の取消しを求める。

四  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1ないし3の事実は認める。

2  同4の主張は争う。

五  被告の主張

1  昭和六〇年六月七日の口頭審理の席上、原告らは審査申出書に沿って本件各土地の固定資産課税台帳登録の価格が高過ぎると陳述し、これに対し、市長は答弁書に沿って右価格が適正であると述べ、以後、当事者双方から主張がなされた。被告は、原告らに対し、既に実地調査をした旨を告げ、証拠の提出を促したが、原告らからは、口頭審理の継続とか新たな証拠の提出とかの意見はなかったので、双方に他の主張、立証がないことを確認したうえ、口頭審理を終えた。双方から提出された書面、実地調査及び右口頭審理の結果、法四〇三条一項の規定による自治大臣の定める固定資産評価基準等により、審査の資料は十分であり、審理不十分ということはない。

2  固定資産評価審査委員会の口頭審理手続は、必ずしも口頭審理を通じてのみ攻撃防御を尽くさせるということを意味せず、申出人が評価に対する不服を明らかにするのに必要な範囲で評価の根拠、方法、手順を了知することができるような措置がとられれば足りるのであって、口頭審理の申請があっても、口頭審理と併行して他の審理、調査を行うことは妨げられない。

3  被告は、市長のした本件各土地の固定資産評価価格の決定は一部を除き適正であると認めた。その算出経過は、前記固定資産評価基準に従い、近傍地比準方式により、標準地の平方メートル当たりの評点に対し減点補正率を乗じたものであって、標準地の選定、評点一点当たりの価格及び補正率の定め方に違法不当な点は認められなかった。そして、その旨を審査決定書に記載しているのであるから、本件審査決定には十分な理由が付されている。

4  市長及び被告は、本件各土地及び市長が近傍地として選定した土地の状況を調査し、別紙目録(一)、(二)記載の各土地に対しては姫路市大塩町二〇七七番地の一八の土地を、別紙目録(三)、(四)記載の各土地に対しては同市的形町的形一九九七番地の土地をそれぞれ標準地とするのが妥当であると認め、売買実例価格から各標準地の適正評価額を求め、これを前者につき一万五〇〇〇円、後者につき一万三〇〇〇円とした。

5  市長及び被告は、右各評価額に基づき、本件各土地につき以下の減点補正を行った。

(一)  標準地を市街化区域に設定したので、本件各土地が市街化調整区域にあることからくる価値観による補正として、〇・七の減点補正率を乗じた。

(二)  無道路地であることを考慮して、〇・八の減点補正率を乗じた。

(三)  旧塩田地であって、一筆当たりの地積が大きくその利用状況に影響があること及び形状等を考慮して、〇・八の減点補正率を乗じた。

(四)  付近の宅地に比べて低く、雑種地としても未成熟であることなどから、低地補正として〇・八の減点補正率を乗じた。

さらに、被告は、別紙目録(一)記載一、四、五の各土地については、河川法規制対象部分につき一〇%の減価補正をし、同目録記載一三、一四、別紙目録(二)記載一五、一六の各土地については、海岸法規制対象地として満潮時の水際から二〇メートルまでの部分につき一〇%の、二〇メートルを超え四〇メートルまでの部分につき五%の減価補正をした。

六  証拠《省略》

理由

一  請求原因1ないし3の各事実(原告らが本件各土地の所有者であること、市長が右各土地に対する昭和六〇年度の固定資産の価格を別表の市長決定価格欄記載のとおり決定し、固定資産課税台帳に登録したこと、これに対し、原告らが被告に審査の申出をし、原告山本幸二を除く原告らが口頭審理による審査手続を行うべきことを申請したこと、被告が口頭審理を経て、一部の土地につき右登録価格を別表の審査決定価格欄記載のとおり修正したが、その余の土地については申出を棄却したこと)は、当事者間に争いがない。

二  《証拠省略》を総合すると、次の事実を認めることができる。

1  本件審査申出は昭和六〇年五月一日になされたところ、被告は、その形式的な要件を審査した後、同月七日、これを受理し、同月一〇日、市長から答弁書が提出され、被告は、これを各原告に送付した。

2  同月二二日、被告は、市資産税課職員の案内で、大塩、的形の旧塩田地区の現場に臨み、実地に調査し、市長が本件各土地の価格を算出するに当たって基準とした標準地と本件各土地との距離等を検分した。この実地調査が行われることは、原告らには通知されず、したがって、原告らはこれに立ち会わなかったが、後記口頭審理の場で、被告委員長から原告らに実地調査をした旨が告げられた。

3  同月二七日、被告は、本件ほかの審査申出事件について、市総務局長、税務部長、資産税課長等から答弁書の説明を受け、審査申出書と対比して、問題点を審議した。

4  同年六月七日、被告は、午後〇時三〇分頃から、市の担当者から評価の根拠等について説明を受けた後、申請があったものについて口頭審理を行った。その手続は、まず審査申出人が審査申出書に基づき申出の趣旨、理由を陳述した後、市の担当者が答弁書に基づいて答弁し、これに対し、申出人が申出の理由の補充をするなどのやりとりがあり、ほかに主張や立証がないことを被告委員長が確認して終了した。口頭審理の時間は、原告梶原合資会社についてはその代表者の梶原恭一郎の分と併せて午後一時一〇分から同二時八分までの五八分間、原告梶原倭文については同二時三八分から同五八分までの二〇分間、原告山本正彌については同三時二八分から同五〇分までの二二分間であった(原告山本幸二は、口頭審理の申請をしていなかった。)が、原告梶原倭文、同山本正彌の不服は原告梶原合資会社の申出の理由と共通する部分があり、同原告らは梶原恭一郎の陳述、審尋を傍聴していたから、同原告らに対するその部分の審尋は、省略された。なお、原告梶原合資会社に対する審尋の過程で、同原告側が本件外の土地について一部埋め立てられていない部分があると主張し、被告委員長がその部分の面積を出すために地図を提出するよう求めたのに対し、梶原恭一郎においてこれを了解するということがあった。

5  同月一四日、被告は、河川法、海岸法の規制からくる減価について、市の担当者に調査と資料の提出を求め、審議した。

6  同月二六日、被告は、右調査の結果を聴き、審議した後、本件各土地の価格を別表の審査決定価格欄記載のとおりとすることに決した。

7  同年七月三日、被告は、右決定を確認し、これを同月六日付固定資産評価決定通知書でもって、同月八日、各原告に通知した。

8  原告らの審査申出の理由は、おおむね次のとおりである。

(一)  市長決定価格は、本件各土地が市街化調整区域にあることからする補正減額が少ない。

(二)  面積が大きいこと及び道路がないことに対する補正減額も少ない。すなわち、本件各土地を開発し、既成の宅地並みにするには相当な減歩(三割以上)が必要であるから、それに見合う補正減額がなされるべきである。

(三)  市街地からの距離による補正として、一ないし二割の減額を希望する。すなわち、本件各土地は、市街地あるいは私鉄の駅から〇・八ないし一・六キロメートル離れていて、塩田跡地の中でも比較的市街地に近い場所との間に地価の格差がある。

(四)  本件各土地の一部には、河川沿いや海岸沿いで防災上の規制を受けている区域がある。そのような場所については、その制約によるハンディキャップを考えて貰いたい。

9  本件審査決定通知書に記載された審査決定の理由の要旨は、後記三3の判示のとおりである。

三  原告らは本件審査の手続に瑕疵があると主張するので、以下、検討する。

1  原告らに意見陳述や資料提出の機会が十分に与えられなかったというような事情を窺わせるに足りる証拠はない。原告らは、本件口頭審理の時間を云々するが、口頭審理は審査申出人の申出の趣旨を明らかにするとともに評価庁の評価の根拠を審査申出人に了知させるために行われるものであるから、その目的を超えて時間をかけることは不必要であるし、前記二4認定の事案からすると、被告が原告らの意向を殊更に無視して口頭審理を打ち切ったというわけでもないから、口頭審理が短時間に過ぎたということはない。原告らはまた、被告の開催した委員会の回数が少なかったようにも主張するけれども、法四三三条一項によれば、固定資産評価審査委員会は審査の申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定をしなければならないことになっているから、被告としては徒に委員会を繰り返して時日を延ばすことはできないというべきである。ほかに、被告が十分な審理を遂げなかったと認めるに足りる証拠はない。

2  前記二認定の事実によれば、被告は、口頭審理に先立ち、実地調査をしたが、その際、実地調査を行う旨を原告らに通知せず、原告らをこれに立ち会わせなかった。また口頭審理の前後にわたり、非公開で、市の担当者から答弁書の説明を受け、そのほかの意見を聴いている。しかしながら、法四三三条七項によって準用される行政不服審査法二九条二項は、審査庁は、審査請求人又は参加人の申立てにより検証をしようとするときは、あらかじめ、その日時及び場所を申立人に通知し、これに立ち会う機会を与えなければならないと規定するが、審査庁が職権で検証をする場合については、同旨の規定がない。そして、法四三三条一項によれば、固定資産評価審査委員会は、審査の申出を受けた場合においては、直ちに必要と認める調査、口頭審理その他事実調査を行うべきものとしている。同条二項は、審査を申し出た者の申請があったときは、特別の事情がある場合を除き、口頭審理の手続によらなければならないと規定しているが、審査手続は、固定資産税の適正・迅速な賦課・徴収という公益目的実現のための行政手続の一環であり、民事訴訟における口頭弁論のような厳格な口頭審理方式をとることは、その本質上必ずしも要請されていないから、口頭審理の申請があっても、口頭審理と併行して他の調査等を行うことは妨げられないと解される。したがって、本件における右のような被告の措置は、原告らの被告に対する公平感を損い、妥当なものとはいえないけれども、いまだ審査手続が法令に違反したとまではいうことはできない。

3  原告らは、本件審査決定は原告らの主張に対する判断を欠いているから、理由不備の違法があると主張するけれども、前掲甲号各証によれば、本件審査決定は、評価の方法として近傍地比準方式を採用し、(ア) 近傍地(標準地)として、別紙目録(一)、(二)記載の各土地につき姫路市大塩町二〇七七番地一八の土地を、別紙目録(三)、(四)記載の各土地につき同市的形町的形一九九七番地の土地をそれぞれ標準地とするのが妥当であると認め、売買実例価格から右各土地の適正評価額を求め、これを前者につき一万五〇〇〇円、後者につき一万三〇〇〇円とし、(イ) 右標準地が市街化区域にあり、本件各土地が市街化調整区域にあることから、減点補正率〇・七を乗じ、(ウ) 本件各土地のある地域一帯に公道がなく、土地の利用増進の妨げになっていることを考慮して、無道路地補正として減点補正率〇・八を乗じ、(エ) 本件各土地の一筆当たりの面積が通常の土地に比して平均的に大きいことからくる利用上の標準地との開差を考慮して、面積補正として減点補正率〇・八を乗じ、(オ) 本件各土地が塩田の跡地であって、宅地とするにはなお覆土等の造成を要し、雑種地としても未成熟であることを考慮して、低地補正として減点補正率〇・八を乗じ、(カ) さらに、別紙目録(一)記載一、四、五の各土地については、河川法規制対象部分につき一〇%の減価補正をし、同目録記載一三、一四、別紙目録(二)記載一五、一六の各土地については、海岸法規制対象地として満潮時の水際から二〇メートルまでの部分につき一〇%の、二〇メートルを超え四〇メートルまでの部分につき五%の減価補正をしたものであって、その判断の過程に特に不合理な点はない。そして、固定資産評価審査委員会の決定書には、審査決定価格を根拠づける相当の理由が示されれば足り、審査申出人のした個々の主張に対する判断までは要求されていないと解するのが相当であるから、本件審査決定書に市街地からの距離による補正をすべきであるとの原告らの主張に対する判断が記載されてなくても、本件審査決定に理由不備の違法があるとすることはできない。

4  条例によれば、市の固定資産評価審査委員会の書記は、口頭審理、実地調査及び委員会の議事について調書を作成しなければならず(七条七項、八条一項、九条一項)、該調書には、審理又は調査を行った委員若しくは議事に関与した委員及び調書を作成した書記がこれに署名押印しなければならない(七条八項、八条二項、九条二項)。前掲の乙号各証によれば、本件の口頭審理等の調書の一部に委員及び書記の署名押印あるいはそのいずれかを欠くものがあることが見受けられるけれども、これは、形式的なミスであって、口頭審理等の手続を違法とするに足るものではない。

四  原告らは、本件各土地の審査決定価格が近隣ないし周辺の土地と比較して不均衡かつ不公平に高いと主張し、前掲各証拠によれば、国道に近く市街化区域にある別紙図面記載A付近の土地の固定資産評価価格が平方メートル当たり六一四四円であることが認められるけれども、他方では、原告梶原合資会社は昭和五六年三月に本件各土地付近の土地を市の汚水処理場のために三・三平方メートル当たり七万七〇〇〇円で売却したことが認められ(なお、《証拠省略》によると、昭和五四年に別紙目録(二)記載の各土地に近い土地の売買例があるところ、その売買価格は平方メートル当たり一万三六三六円であったことが認められる。)、このことからすると、本件各土地の審査決定価格が高すぎるとも一概に言い切ることはできない。原告らはまた、別紙図面記載Bの高砂市の土地の評価価格との比較を云々するが、固定資産の評価については自治大臣の定める固定資産評価基準によるものの、右評価基準には、本件各土地のような雑種地の評価につき近傍地比準方式をとった場合の補正の程度についての基準は示されていないから、各自治体により評価のばらつきが出るのは、やむをえない。さらに、原告らは、市街地からの距離による補正をしなかった点の違法を主張するが、本件各土地は塩田跡の雑種地であって、現に宅地として利用されているわけではないから、右の点を考慮しなかったからといって不合理とはいえない。

五  そうすると、本件審査決定には、原告らの主張する違法な点はなく、ほかに取消しの原因となるに足りる違法事由の主張立証はないから、本訴請求は理由がない。

よって、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 林泰民 裁判官 岡部崇明 裁判官植野聡は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 林泰民)

<以下省略>

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